意識はいつ生まれるのか

Dec 20, 2015  

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論 ジュリオ・トノーニ (著), マルチェッロ・マッスィミーニ (著), 花本 知子 (翻訳) を読んだ。

この本で述べられていることはそのタイトル通りで、 脳を観測することで意識があるのか無いのかがわかるということ、 つまり意識がいつ生まれていつ消えているのかということだ。 結論から言うと、大脳の一部である視床-皮質系の情報処理の複雑度の高/低によって 意識のON/OFFが切り替わるらしい。 この視床-皮質系が何をするところとされているのかいまひとつよくわからなかったが、 視神経に直接関係するというわけでもないらしく、そこを計測してみたらそうなったということらしい。 切り替わる原因となるのは脳内に分泌される正イオン(カリウムイオン)による電位の変化で、 ニューロン間の信号の伝達が鈍くなることだと述べられている。 例えばノンレム睡眠のときはこれが分泌されるし、 麻酔の一種は脳内でカリウムを分泌する器官の働きを高めたりするらしいので、 意識の変化と関係があることは間違いない。

筆者らは視床-皮質系の一部に電気的な刺激を加えて、 脳波計によって視床-皮質系のその他の部分が活性化するタイミングを計測した。 情報処理の複雑度をどう計算するのかは詳細が書いていなかったが、 「統合」と「情報」の合計値で評価するらしい。 「統合」とはあるニューロンに刺激が加えられたときにその他のニューロンが活性化するかということ。 「情報」とはあるニューロンに加えた刺激とその他のニューロンの活性の時系列的な差を示すものだ。 ノンレム睡眠時の脳とか脳死状態の患者の脳を計測して数値を計算すると、意識があるときの脳とはっきりとした違いが 出るというから面白い。

ただ、この本で述べられているのは意識があるならば視床-皮質系の情報処理の複雑度が上がる、 ということだけで、いかにして意識を生み出すのかということは依然謎に包まれている。 視床-皮質系がぐちゃぐちゃと活性化しているときに行われている情報処理とは一体何なのか、 これがわかってくると意識を持った人工知能が実現できるかもしれない。

おわり。